あなたは自分に優しくしているでしょうか?自分に優しくすると言う事は、自分の言いたい事ばかり言うと
か、良く考えずにしたい事をしたいようにする、という事ではもちろんありません。ありのままの自分を冷静
に、素直に認め、そして温かく受け入れる事
なのです。自分に優しくする事と、子供とどのように関わるかと
いう事は似ている所があるので内容が重複する部分がかなりある、という事を、始めにお断りさせていただき
ます。

自分に優しくする事の例をあげてみたいと思います。ある日私は、特急電車に乗って窓側に座りました。次の
駅から乗車した人が私の隣に座って、私が窓から景色を眺めていたのに、黙ってブラインドを下ろしました。
その時、私は不快になったのです。なぜ不快になったのかを考えてみたくなりました。相手は私に対しての悪
意がない、という言動、に対して不快感を感じる自分に、罪悪感さえ持っていましたから、今日の出来事は自
分のそんな側面に焦点を当てて見つめて行くチャンスだ、と思いました。そして自分が無視された、あるいは
見下されたと感じたから不快になったのだろう、と思ったのです。欠点だらけの私は自分の自信のなさを見透
かされてそこに気付かれ、そこを指摘されたように思い、普段隠している劣等感を刺激され不快感を感じたの
だ、という自分の心のメカニズムに気付いたのです。そこで、その理由についても考えてみました。自分に優
しくするためには、ありのままの、等身大の自分を、評価せずにまず認め、受け入れると言う事がとても大切
な事
なのです。そうすると自分というものがだんだん見え始めて来ます。こんな風に思う自分が悪い、とか、
こんな風に思ってはいけない、とか、すべて相手が悪いだけ、などと評価する事ではなく、今、私は不快な
んだ、と自分の感情を受け入れる事が自己洞察の糸口になるのです。それから自分が何故そう感じるのかを考
えて行く事は自分の育った環境へ目を向けて行く事であり、子供の頃の自分の気持ちを、今、ここで思い出し
て行く事
なのです。そして、傷ついたままの幼い時の気持ちがあったなら、それを安全で安心な場で話す事に
よって、やがて楽しかった事がクローズアップされて思い出せる効果があります。嘆きの仕事をしてつらい思
い出を手放して行く、 と言います。それが、人間関係の再構築の第一歩
なのです。

先ほどの例に戻って見ましょう。私は子供の時に厳しく育てられた事によって、親に認めてもらうためにはよ
り良い自分になる努力をしなければいけないにもかかわらず、自分に悪意を持っているわけでもない相手の言
動に対して不快感を感じる自分はまだまだダメな人間であり、これでは親に認めてもらえないだろう、という
風に考えるので、人に不快感を感じる自分に、罪悪感を持ったわけです。そう気付いたら、お母さんに認めて
もらいたくて随分頑張って来たんだね。これからはもっと自分の気持ちを素直に外に出していいんだよ。お母
さんは幸せに生きて行って欲しくて厳しかったのだろうから。それはお母さんが子供である私を愛していたか
らだものねえ。こんな風に自分に語りかけてみる、そして今度は、これからはどのように生きて行きたいのか
を考え、出来る所から少しずつ、無理のないようにやって行く、これが自分に優しくして行くプロセスなの
です。

自分の気持ちに気付く事、相手の立場にもなって見る事の両方が出来ると、自分と人の両方とうまく付き合っ
て行けて、生きづらさの軽減
につながって行きます。時間はかかるかも知れませんが、御自身のペースで良い
のです。そしてゆっくり、気持ちを否定せずにまずはありのままの自分の気持ちを、温かく冷静に聴く、そう
すると、気持ちを吐き出す事によって感情の浄化が起こり、気持ちがすっきりしたり整理されたりします。

自分育ては、子育てにもきっと役立つでしょう。あなたの目の前にいる子供は、まだ親の様々な援助が必要で
す。無条件の愛を感じて守って行こうとしていらっしゃるでしょう。が、今この瞬間も自分で呼吸して生きて
行ける生命力を十分に持っている
あなたとは別の存在です。そして、あなたと同じ尊厳を持っているのです。
自分育ても子育ても、相手の⟨自分の場合は自分の気持ちの⟩ペースに合わせて、という事が感情の浄化や自己
洞察につながるのは、本人が誰かにせかされる事なく自分で本当に納得出来るからなのです。
ですから、相手を良く理解し、信じて待つ事子育てにも最も重要な事の一つなのではないでしょうか。
待つ事はあなたが自分や相手を信じるからこそ出来るのですね。
これを読んで下さった方の、生きづらさの軽減のきっかけに少しでもなれば、と心から思います。

ありのままの自分を見つめ、嘆きの仕事をして自分の心残りの感情を出し、人間関係の再構築へとつなげて
行くお手伝いをするのも、心理カウンセリングなのです。どうぞ安心なさってカウンセラーをお訪ね下さい。
もしかしたら、親から愛されていなかったので自分に自信が持てない、と感じていらっしゃる方があるかもし
れませんが、それはあなたが悪い子だったのではなく、親があなたへの愛をうまく表わせなかった、その方法
がわからなかったのでしょう。ですから、これからはあなたが、あなた御自身を愛して、優しくしてあげて下
さい。心で感じる事と頭で考える事、そしてそれをもとに行動する事の三つが一致していると、ストレスは軽減されるでしょう。
人は、この世に生まれて来て生きている、という事だけで愛される価値があると私は思うのです。どうぞ、御
自分の心と体を大切になさって下さい。